正義で目が曇る。
2020/4/24 PAGE14
こんにちは。はりー(id:HollyWoodLog)です。
この本、「流浪の月」を読み終わった私は、多くの問題提起をされた気がしました。
日常で起こっている犯罪、どのような目で見ていますか?
「被害者がかわいそう。」「○○な人なんだから、死刑にすればいい。」
それは確かな正義なんでしょうか。
被害者は、加害者に感謝しているかもしれない、愛してるかもしれない。そのような可能性を考えたことはありますか?相手は人です。
様々な感情が渦巻きました。
今回紹介する本、「流浪の月」はそんな本です。
それでは、どうぞ。
1. あらすじ
話は、放課後のファミレスから始まる。物語の中心である三人が、一つの机で食事を楽しんでいた。何気ない日常。しかし彼らは、15年前に起こった「幼女誘拐事件」と「幼女誘拐事件の続き」の当事者である。
中心人物の一人、家内更紗はある両親のもとに生まれた。母は、自由奔放な人で周りからは常識がないと遠ざけれられて生きてきた。反対に父は、まじめでしっかりした人であった。三人は幸せな暮らしていた。
事態が急変したのは、父親の死からだ。9歳だった。
父が亡くなり、寂しさを紛らわすように、母はいろいろな男を作った。
やがて母は目の前からいなくなり叔母の家に引き取られた。
今までの自由な暮らしは非常識だとさげすまれ、縛られた毎日だった。
日に日に作った自分にストレスが溜まっていった。
さらに、叔母の一人息子が毎晩のように更紗の部屋を訪れ、身体中をまさぐられた。
最悪な日常が続くある日に、いつも公園にいた不審な男に声をかけられた。
その日は雨だった。
「帰らないの」と声を掛けられたが、自分の家には帰りたくなかった。
「うちにくる?」この一言は、更紗にとって恵みの雨だった。
彼の名は文。19歳の大学生である。彼の優しく新鮮な性格に助けられ、何日も家に帰らない日々が続いた。一週間後、更紗は誘拐されていることになっていた。
しかし、彼との楽しい日常は続いた。
二人で、テレビを見ているときにパンダのニュースをみて動物園に出かけた。
更紗のことは全国的に報じられていたために、文はすぐに逮捕され二人は離れ離れになり、家に戻ることになった。
家に戻ると、夜に扉があいた。また息子が来たのだ。
更紗は、限界だった。隠し持っていた瓶で頭を殴った。
更紗は、取り調べにあったが恥ずかしさと何もできなかった悔しさで何も言えなかった。更紗の奇行とみなされ、養護施設に預けられた。
更紗は高校卒業と同時に施設をでて、当時の恋人と同棲を始めた。
昼はアルバイトをしているが、誘拐事件の被害者として、腫物のように扱われた。
誰も更紗の知っている真実を聞いてくれなかった。
そんなある日に更紗は、仕事場の付き合いで話題になっている喫茶に行くことになった。
重いドアを開けた先には、趣がある店内が広がっていた。
そして、奥のカウンターには15年前と変わらない文がいた。
15年ぶりの再会で動き出してしまった止まっていた時間。
周囲の人を巻き込みながら物語は、大きく加速していく。
2. 感想
この本を読んで私が思ったことは、善意ほど怖いものはないということです。
誰しもが、「やさしくしてる。あなたのことを思って言っている。」と自分が正義であることを疑っていないために、当の本人が傷ついていたり、被疑者を極悪人に釣り上げていたりして誰も幸せになっていないことに気づいていないさまは、見ていて吐き気まで起こしました。
同時に、私自身にも問いかけることになりました。
先入観で憐れんでいないか、自分の正義を押し付けていないか、多くのことを考えるきっかけになり、かなり心が痛くなるお話でした。
愛の形についても書かれた気がして、人によって愛の形が変わっていること。
そこには価値観の違いが大きく表れていることも知りました。
胸糞悪い表現もありますので、読む際は心してお読みください。
3. 最後に
いかがだったでしょうか。
私は、すごい大作に出会うことができました。
相手のことを思っている風になっていないか今一度確認する必要がありますね。
皆様もぜひどうでしょうか?
それでは、また。